根管治療
根管治療とは歯の根っこ、つまり神経の治療のことを指します。
歯の根っこの管を根管(こんかん)といい、根管の中には歯の神経があります。虫歯が進行し、神経まで達して痛みが強くなると、根管の中の神経を取り除く必要が出てきます。
神経を取った後は根の中を消毒し、お薬を詰めて細菌が入り込まないようにします。これを根管治療と呼びます。根管治療は歯を残すことのできる最後のチャンスとなる治療です。
根管治療が失敗すると、歯を抜歯しなくてはならなくなります。歯の神経の治療は、治療するたびに寿命が短くなります。
初めて神経を治療する歯と、再治療で2回目の神経の治療をする歯とでは、成功率が違うのをご存知ですか?
初回治療では90%以上、2回目以降は50%と、成功率に格段の差が出ています。つまり、根管治療は初回治療を成功させることが歯を残すための絶対条件と言えるでしょう。
根管治療を成功に導くポイント
①無菌状態での治療を行う
歯の根は顎の骨髄に通じています。
そのため、歯の根っこの治療で重要なポイントは、歯の根っこの中を「無菌」にすることです。しかし、お口のには何百万ものばい菌(細菌)が存在します。
そのばい菌は、唾に混ざっているのです。つまり、唾の中には驚くほどの細菌が存在しているということになります。
歯の根っこの治療(神経の治療)を成功させるポイントは「いかに唾を排除するか」が非常に重要になってきます。
・ラバーダム
ラバーダム治療とは、ゴム性の膜を歯の周りに張り、唾を排除する治療法です。
これを使用する事によって、唾を確実に排除する事ができます。よって、無菌状態で治療を行う事ができます。
下顎の奥歯などは、これ無しに治療することは非常に困難になります。
・隔壁を作る
歯の根っこの治療は、いかに根の中を無菌にするかが重要です。
しっかりと根っこの中を無菌にする事ができても、次の治療までに食事など日常生活で菌が根の中に入ってしまうと、再度感染を起こしてしまいます。
歯の根っこの治療をする歯は、虫歯でぼろぼろになっている事が多いのが現状です。
きちんと治療前に唾(ばい菌)が入らないように、歯に壁を作ることが絶対に必要なのです。
この処置はどのような根の治療にも、必ず必要になります。この壁がない状態では、どのような治療をしても絶対に治りません!
②水酸化カルシウム療法
水酸化カルシウムとは、歯の根の中を滅菌する時に使用する薬です。
昔はホルマリンを使っていました。歯医者さんに行くと独特の臭いがあると思いますが、それは歯の根っこの中を滅菌する薬のにおいです。
近年、このホルマリンの薬が「人体に有害である」と言われています。
当院では「水酸化カルシウム製剤」を歯の根の治療に使用します。人体への有害性はきわめて少なく以下の様なメリットがあります。
・長期間、変質せずに殺菌効果が持続する
・歯の根の中に染みこんで行き、歯全体を殺菌出来る
・生体に非常に安全である
現在の歯の根の治療において、「水酸化カルシウム療法」はゴールドスタンダードになっています。
③徹底的に洗浄
左の写真は歯の根っこの中の拡大写真です。
歯の根っこの中は、「軽石」の様に小さな穴がたくさん空いています。その穴の中にバクテリアが入って行き、歯を中から腐らせてしまいます。
歯の根っこの中を消毒液で洗っても、小さな穴の中に入っているバクテリアを洗浄する事はできません。
唯一、この小さな穴の中を洗浄できる機械が「ジロソニック(亜音速波振動根管拡大洗浄装置)」です。
キャビテーション効果(液体の中の流れの中で、圧力差により泡を発生させる物理現象)により、歯の根っこの小さな穴まで洗浄できる唯一の機械です。
④確実に封鎖する
徹底的に洗浄し、根っこの中を滅菌した後は、2度とばい菌が入らないように根っこの中を封鎖する事が重要です。
この時に重要なことは「詰め残しを作らないこと」です。
「詰め残し」を作ると「残った部分」でばい菌が繁殖し、歯は根っこの中から腐っていきます。
左の写真はしっかり詰まっていません。右の写真はしっかり詰まっています。右の写真の歯の根っこの先に「お皿」のように写っているのが分かりますか?
この「お皿」がしっかり詰まった証拠になります。
⑤歯の根っこを詰める
歯の根っこ中を滅菌する事ができたら、今度は、歯の根の中に2度とばい菌が入らないように根っこの中を樹脂で封鎖します。
この時に一番大切な事は歯の根の先の先までしっかり樹脂で封鎖する事。しっかりと封鎖が出来ていなければ、その部分からばい菌が繁殖し、再発を繰り返し、最終的には歯を腐らせてします。
きちんと根の治療をしなければ、再治療になってしまいます。
根の治療はやり直すごとに、歯の寿命が短くなります。
⑥歯の土台を入れる
歯の根っこは、詰めたら一安心!ではありません。
歯の根っこの治療が終わった後は、歯の内部は中空の状態になります。乾燥マカロニを指で潰すと簡単に割れてしますのと同じで、内部が詰まっていないと、少しの力で歯が割れてしまいます。
また、歯の根は樹脂によって詰めますが、樹脂と歯はくっつきません。
よって、そのまま放置すると噛む力などによってできた隙間から唾(ばい菌)が侵入し、また感染を起こしてしまいます。それを防ぐ為に、「歯の土台」を入れるのです。
歯の土台を入れずに治療されている患者さんがよくいらっしゃいますが、歯の土台を入れなければ歯は長く持ちません。しかも、歯の土台はきちんとした物を入れなければ接着がはがれ、歯を割ってしまいます。
歯の土台の治療には、いくつかポイントがあります。
・出来るだけ歯を削らないように、細い土台を入れる。
・現時点で、信頼できる材料は金属です。 特に「金」の土台がいいと言われています。
・歯と土台を接着させる時は、接着剤の種類や処理にこだわる。
・歯茎より1ミリ上に健康な歯を残す。
顕微鏡を使用した治療
歯はとても小さいです。さらに口の中はとても暗いです。この様な環境で、細かな作業が出来るでしょうか?
左の写真は私たち歯科医が、裸眼で診療した時の状態です。右の写真は顕微鏡を見て、実際に治療する時の状態です。
さて、どうでしょうか?歯医者さんはスーパーマンではありません。このホームページを見ている方と同じ人間です。歯医者さんだからよく見える訳ではありません。
「裸眼」での治療がどれくらい不正確なものなのか、お分りいただけますか?
根っこの治療が失敗する大きな原因のひとつに、神経の管の見落としがあります。しかし、「裸眼」で治療をしていると、これは見落として当たり前なのではないでしょうか?